
報道記事:欧州エネルギー取引、追い証1.5兆ドル発生も-市場機能停止の恐れ
欧州のエネルギー取引では少なくとも1兆5000億ドル(約210兆円)の追い証が発生する見通しで、この支払い支援で政府が流動性を拡大しない限り、市場が機能を停止する恐れがある。ノルウェーのエネルギー企業エクイノールが指摘した。
Bloomberg
数十年間で最大のエネルギー危機は、公共料金を押し上げインフレを加速させているだけでなく、激しい値動きの中での取引を保証する資金をも飲み込もうとしている。エネルギー市場が機能停止に陥らないよう介入を求める圧力が欧州連合(EU)当局者には増している。
エクイノールのガス・電力担当幹部、ヘルゲ・ホーガン氏はインタビューで、「流動性支援が必要になるだろう」と語った。現物市場は機能しているものの、問題はデリバティブ取引に集中しているとし、デリバティブ取引を支えるために同社が必要だと試算した1兆5000億ドルという金額は「保守的な」見積もりだと説明した。
企業の多くにとって、追い証管理はますます難しくなりつつある。公益企業は多額の信用枠確保を強いられ、金利上昇でそのコストは膨らんでいる。
ミラノで開かれたガス技術関連会合でインタビューに応じたホーガン氏は、こうした信用枠は追い証対策で活用できない資本だと指摘。「企業が大きな資金を積む必要があるということは、市場の流動性が枯渇することであり、ガスのデリバティブ市場にとって良いことではない」と述べ、EUの介入はデリバティブ取引にとって「理にかなう」だろうと続けた。
【コメント】
9月6日の記事と少し古い話である。エネルギーだけではないが、世界は様々なデリバティブが存在する。20年ほど前に注目され、その規模は拡大し続けている。全体の規模は知らないが、コロナ対策での金融緩和以降、想像できないような規模になっているかもしれない。この記事では、エネルギー取引だけで1兆5000億ドルもの追証が発生するというのだ。
デリバティブは急激な価格変動があると、取引するための保証金が足りなくなり、追加で金を出さなければならなくなるのだ。企業がデリバティブ取引をしている場合、追証は払えるかもしれない。だが、今年に入ってから金利が上がっているので、その追証をはらうための調達金利が高くなってしまう。
エネルギー企業で考えると破綻が近づいているのが想像できる。例えば、電力会社がエネルギー価格が下がった場合に備え、エネルギー価格が下がった時に利益が出るデリバティブを持っていたらどうなるか。
・今はエネルギー価格がものすごく上がっている
・そのデリバティブの価格は、大きくマイナスとなる
・保証金が足りないので、資金調達して保証金を増やす
・金利が上がっているので、資金調達コストが高くなる
・電力の燃料高により、本来の会社の利益が落ち込む
・赤字会社には金を貸してくれない
たぶん、今はこれくらいの状態ではないだろうか(全て想像・・・)
そこへ、ロシアが何か行動に出ると、さらにエネルギー価格は跳ね上がり、払えないほどの追証が発生する。ドイツに核ミサイルを撃ち込む必要はない。天然ガス、石油を止め、貯蔵タンクを1つ2つ爆発させれば、この事態になるだろう。
記事にあるように救えるのは政府しかない。政府動かなければ、今度は金融危機を見越して、株式を含むあらゆる金融商品が売られることとなる。