ロシアからEUへの天然ガス供給再開か しかし供給能力の20%だけか

報道記事:ロシアのガスプロム、ノルドストリームでガス供給再開へ-関係者

ロシアの国営天然ガス企業ガスプロムは、パイプライン「ノルドストリーム」を通じた欧州へのガス輸出を21日に再開する見通しだ。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。輸送能力を下回る水準での供給になるという。

関係者によれば、21日に保守作業が終了した後にガス輸送は再開されるが、ガスプロムは欧州の一部顧客に対して不可抗力条項を宣言しており、供給量は通常を下回る水準が維持される。関係者は、情報が非公開だとして匿名を条件に語った。保守作業開始前の段階で、ノルドストリームを通じた欧州へのガス供給は輸送能力の最大40%に抑えられていた。

ロシアのプーチン大統領は供給再開を示唆したが、パイプラインへの供給に不可欠なタービンの到着遅れで、別の保守点検が予定される今月末にも供給量が能力のわずか20%に減少する可能性があると警告した。タービンは補修のためカナダに輸送され、制裁で現地に足止めされた。

プーチン大統領は19日遅く、イランでの首脳会談後に記者団に対しタービンについて、現在「2つだけ稼働している」と発言。ただカナダから戻る設備の到着が修理に出す予定のものとの交換に間に合わなければ、「稼働は一つだけになり、日量3000万立方メートルの供給になる」と述べた。発言はテレビ放映された。

ロシア産ガスに依存する欧州は保守点検終了に伴い21日に供給が再開するかどうか不安を持って見守っている。供給が途絶すれば欧州業界に壊滅的な影響をもたらすことになり、冬の配給や操業停止の見通しが高まる。ガスを巡る対立はユーロの下押し圧力にもなっており、欧州委員会はユーロ圏の消費を減らす方策を見いだそうと急いでいる。

ガス価格の急伸でガスプロムは主要市場からの輸出収入の年間目標をわずか5カ月で達成でき、ロシア政府の立場を有利なものにしていると、関係者の1人は語った。

ガスプロムの計画についてはロイター通信が19日、先に伝えた。

Bloomberg

【コメント】
再開されないとあきらめかけていたノルドストリーム1からの天然ガス供給が再開されるらしい。ただし、供給量は本来の20%。ないよりはいいのかもしれない。

記事にあるようにガスプロムは今年に入ってからのガス価格高騰によりすでに年間目標を達成してしまっている。つまり、今年の残りは輸出しなくても会社としては困らないのである。いきなり供給停止にするより、元に戻す可能性を残したままの方が今後の交渉がしやすいのかもしれない。さらに高騰したガス料金を受け取りながら、ガス供給を増やすという餌と減らすという武器を持ち続けることができる。

保守作業の完了は明日である。答えはすぐにわかる。どうなるにしても、EUの苦境は改善されそうにない。EUはすでにガスの使用量を削減するようだ。経済も、人々の暮らしも悪くなる。
  参照:ロイター 7月20日 欧州委、ガス使用量15%削減目標を提案 来年3月まで

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