
報道記事:コラム:中国で広がる失業危機、建国以来最悪の恐れ
[香港 20日 ロイター BREAKINGVIEWS] – 中国で今年起きた失業危機は、1949年の建国以来最悪になる恐れが出てきた。16歳から24歳の年齢層の失業率は20%近くと過去最高を更新し、中国全土の失業者数が2008年以来の水準に迫っている様子がうかがえる。
ロイター
かつての登録ベース方式に比べれば信頼性が高まったとみられる訪問調査方式の失業率は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)期間を通じて6%を下回り続けた。しかし、さらに実態を反映しているとされる民間の指標からはもっと深刻な構図が浮かび上がる。中泰証券のエコノミストチームは2020年初め、7000万人超の雇用が消えたとのリポートを公表した。同チームのトップはリポートを取り消した上、その地位を追われてしまった。
それ以来、失業者数の最新の推計を発表しようとする猛者はほとんど見当たらない。ただ大手求人サイト、智辯招聘によると、今月大学を卒業する1100万人のうち、4月半ばまでに就職先が決まったのはわずか15%にとどまった。
問題は、労働力人口のほぼ半分を受け入れているサービス業に集中している。その多くは飲食店や映画館、ショッピングモールなどでの低賃金の仕事だ。3月に中小企業16万5000社を対象に行った聞き取り調査では、手元資金で事業を続けられるのはたった2.4カ月と過去最短の期間になったことが分かった。間の悪いことに、当局がハイテクや教育、不動産といった大口雇用を抱えるセクターへの規制強化に乗り出し、事態悪化に拍車をかけた。
4月時点で国内総生産(GDP)のほぼ半分を占めていた諸都市で厳しいコロナ規制が導入されると、一部エコノミストは中国の年間成長率予想を政府目標の5.5%よりずっと低い3%まで引き下げた。中信建投証券のアナリストの分析に基づくと、これは新規雇用が500万人下振れし、失業率が1ポイント近く上昇することを意味する。
<政策面で打つ手なし>
1970年代半ばまでの毛沢東統治下の中国では、統制経済が実行されて、働ける人ほぼ全てが仕事に就くことができた。その1つの理由は、失業者への公的な支援制度が未発達なことだった。その後に行われた市場改革では、政府は高成長を実現することで一時的な失業者の急増も許容できた。
例えば1990年代終盤、当時の朱鎔基首相の下で世界貿易機関(WTO)加盟に向けた取り組みの一環として国有企業の人員は30%削減され、3400万人もの従業員が解雇された。しかし民間セクターの自由化が、輸出主導型の2桁成長をもたらして、余剰労働力はすぐさま吸収されてしまった。
ところが世界金融危機が起きた2008年までに、世界との貿易拡大路線に伴う生産性上昇は鈍化が始まり、そこに海外需要の消滅が製造業セクターに手痛い打撃を与えたため、中国社会科学院によると失業率が9.4%に跳ね上がった。もっとも、中国政府はこの問題も金融財政政策の積極的な活用、つまり金利引き下げとインフラ計画への投資で解決した。
こうした過去に講じた対応策も、今回は有効に機能しない。WTOに入りなおすのは不可能だし、若くて安い労働力という人口動態面での武器も失いつつある。政府が今心配しなければならないのは高齢化の進行に比べて不十分な年金の積み立てだ。
これまでに膨大なインフラを建設したことを考えれば、追加的なインフラ投資のリターンも当然低下する。08年の経済対策で生まれた不良債権はまだ完全に処理されておらず、金融緩和効果を減殺している。財政も支出の財源が枯渇しているように見える。ノムラのアナリストチームは、政府が今年の予算で歳入をかなり過大視し、赤字額が6兆元(8970億ドル)になろうとしていると指摘した。
パンデミック中に経済を支えてきた輸出セクターも、貿易相手が景気後退(リセッション)に突入してしまえば、持ちこたえられないだろう。また教育産業やハイテク産業で解雇された英語教師やアプリ開発者に対する新たな求人は乏しい。ここで職業訓練制度があれば大いに役立つが、実際は制度の体をなしていない。
結局、中央政府が支援の手を差し伸べるのは間違いないとはいえ、全員を雇えるわけではない。
軍は大卒者の一部を採用するかもしれない。世界銀行の見積もりで既に全労働力人口の16%を雇用している国有企業と政府系機関も、増員は可能だ。雲南省は今月、教育や医薬品、農業、貧困緩和などの分野で「市民活動的な仕事」を得た大卒者に年間5万元(7493ドル)の助成金を支給すると発表した。これらの仕事がどんなものかは、スターバックスやテスラなどの企業が期待する可処分所得を生み出さない、と言えば分かるだろう。
とっくの昔に肥大化している国有企業の人員をさらに増やすのは、財政的に持続不可能で、民間企業の投資も妨げる。公務員への就職はもはや非常に狭き門だ。昨年の場合、わずか3万の募集人数に対して応募者は200万人に上った。
足元のこうした失業を抑制できないとすれば、実質賃金の減少が消費をさらに冷え込ませ、投資と雇用の拡大を阻むという悪循環が発生しかねない。これは日本を何十年間も苦しませてきた経済停滞を想起させるシナリオだ。
そうなれば既にひっ迫している財政への負担も一層重くなる。最終的には中国共産党が最も忌み嫌う展開が待ち受ける。それは大量の失業者によって社会不安が広がりながら、状況改善につながるほどの雇用を創出できないという悪夢だ。
【コメント】
中国で大卒の失業が増えている。というか、就職できる人が少ない。この現象は今に始まったことではないが、新型コロナウイルスによるロックダウンや外資の引き上げが続く中では生活できない人も出てくるように思う。それは社会不安(デモやストの増加)につながる。
「問題は、労働力人口のほぼ半分を受け入れているサービス業に集中している。」とあるように今の中国では労働力はサービス業が受け入れている。昔であれば、農場や工場に押し込んでおけば、仕事もあるし生産力もアップしていた。しかし、生産が効率化され、機械が物を作る状況では人はあまり必要ない。人を増やして売れないものを作っても仕方ない。
このような状況に中国はどう対応するのであろうか?習近平の進める「共同富裕」は国民全体を貧しくして、国の管理下に置こうとしているように思える。世界が激動する中、食糧を買い込み、ロシアからエネルギーを安定供給し、国民を管理できる状態。そして、台湾や日本へのある意味執拗な軍事威嚇。これらは、今後数年の激動する世界を生き抜くための方策かもしれない。ディーガルの予測でも中国の人口はあまり減らない。日本からみると今後が危ぶまれる今の中国だが、より生き残る力を持っているのは中国かもしれない。