インドの気温はすでに32度 今年も酷暑で農業生産に懸念

報道記事:インド、酷暑再来なら生存の限界に近づく恐れ-2月に既に記録的暑さ

世界で最も人口の多い国になると見込まれているインドは、一段と強力な熱波に見舞われることが増えており、人間の生存の限界に近づいている恐れがある。

  インドでは1901年以来最も暑い2月となり、気象当局は今後数週間に気温はさらに上昇すると予測している。このため、農作物への広範な被害や長時間の停電を引き起こした昨年の記録的な熱波が再来するとの懸念が強まっている。

  気温がセ氏50度まで上昇すればどんな状態でも耐え難いが、人口14億人のインドでは、人が密集した都市を離れられず、風通しの良い住宅やエアコンを利用できない人々にとって、被害はより深刻なものとなっている。

Residents Experience The Heat Wave In New Delhi
暑い午後に休憩する花屋(ニューデリー、2022年4月)Photographer: Anindito Mukherjee/Bloomberg

  レディング大学の気候科学者で、インドの気象パターンを研究しているキーラン・ハント氏は「人間にとって熱ストレスは、気温と湿度が組み合わさって起きる」と説明。「インドはサハラ砂漠のような同じぐらい暑い場所よりも湿度が高いのが一般的だ。これは発汗の効果が低下するか、もしくは効果が全くないことを意味する」と指摘する。

  このためインドでは、気温と相対湿度を組み合わせた「湿球温度」によって人体への熱ストレスをより正確に測定できるとされている。世界銀行が昨年11月に発表した報告書では、インドは世界で初めて湿球温度が生存可能な水準の上限である35度を超える場所の一つになる可能性があると警告している。

  地球温暖化に無縁の国はないが、その中でもインドが「外れ値」となっている理由が幾つかある。以下のハント氏のインタビュー(抜粋)では、そうした要因について考察している。

一段と強力化しているインドの熱波の気候科学的な背景は

  熱波の温度は、月間平均気温である「バックグラウンド」と、その時点で起きた特定の天候によって差し引きする「アノマリー」の2つに分けると理解しやすい。インドではバックグラウンド温度が産業革命前から約1.5度上昇している。また、一部の都市では、ヒートアイランド現象によってバックグラウンド温度がさらに2度押し上げられている。また、森林破壊も影響している。

なぜ危険性が高まっているのか

  熱波で高い気温が長期化すれば、死者の増加につながる傾向がある。インドではここ数十年の急激な人口増加を受け、この傾向がさらに強まっている。

  (危険なのは)インドのバックグラウンド温度が既に非常に高いことだ。例えば、昨年5月に地球上でインド北部に匹敵する気温となっている場所は、サハラ砂漠とアラビア半島内陸部の一部のみだが、いずれも人口密度が非常に低い。インドではバックグラウンド温度が既に40度超と極めて高いため、少しの上昇でも人間の生存の限界に近づく可能性が高い。

Wheat Harvest As India Experiences Heat Wave
農作業中に水を浴びる農民(パンジャブ、2022年5月)Photographer: T. Narayan/Bloomberg

熱波は人間にどのような影響を与えるのか

  インド社会には幅広い影響がある。熱波が長期化すると、広い地域で土壌が著しく乾燥する。農業への影響は言うまでもないが、1カ月後のモンスーンの到来にも影響を及ぼし得る。農業や水の安全保障に悪影響を与えるだけでなく、大雨がそれを吸収しきれない乾燥した土壌を直撃し、局所的な洪水につながる可能性もある。

  モンスーン前の異常な暑さは、特に農業や建設業など屋外での労働生産性の低下のほか、冷房需要の増加による電力網への負担や温室効果ガス排出の増加に関連している。また、熱中症など一般的な健康リスクにも関連しており、特に子どもや高齢者、低所得者層への影響が大きい。

地球温暖化が続く中、インドの未来はどうなるのか

  インドは現時点で時折(湿球温度が)32度を若干超える程度なので、さらに大きく気温が上昇しない限り、生存の限界には達しないだろう。とはいえ、都市化と共に都市のヒートアイランド現象や温暖化も進んでおり、死者を伴う熱波のリスクは常に高まっている。

BloomBerg

【コメント】
 インドが今年も酷暑になりそうということで見てみるとすでに32度となっていた。まだ3月だ。

 昨年、インドは熱波により小麦が育たず、一時輸出禁止措置をとっていた。今年はそれよりもひどくなる可能性がある。世界中で異常気象が続くが、インドのような人口が大きく、農業生産量も多い国で起こると影響が大きくなる。インドが食糧不足となれば、世界でその不足分を支えるのは大変である。輸出余力のある国は少ない上、各国とも肥料不足、農業生産者不足により生産量が減る可能性の方が高い。

 日本も同じである。暑くなるとは限らないが、冷夏、多雨等によりコメ不足や野菜の不足が考えられる。ここ数年はなんとかしのいできているが、油断できる状態ではない。かといって対策できることは少ない。

 これから暖かくなるが、気象が気になり始める。すでに世界は異常気象が始まっている。

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