アジアの金融業界の債権と株価が暴落 クレディ・スイスの救済から始まる金融危機の2段階目 

報道記事:アジアAT1債の下げ最大、HSBC株7%安-クレディS無価値で

アジア時間20日午前の取引で、一部のアジア金融機関が発行したドル建ての「その他Tier1債」(AT1債)が、記録的な下げとなった。スイスの銀行UBSグループによる救済合併合意を受け、クレディ・スイス・グループのAT1債は無価値とスイスの金融市場監督当局が公表し、投資家心理が悪化した。

  20日の香港株式市場では、英銀HSBCホールディングス主導で金融株が大幅安。HSBCの株価は一時6.7%急落し、香港ハンセン指数も一時3.1%安と大幅に下げた。スタンダードチャータードも一時6.5%下落した。

  東亜銀行(バンク・オブ・イースト・アジア)のドル建て永久債(表面利率5.825%)は9.4セント安の額面1ドル当たり約80セント、カシコン銀行の永久債(同4%)は4.3セント安の79.8セントと、いずれもこのままいけば過去最大の下げ幅となる。

  HSBCが新たに発行したAT1債20億ドル相当(約2640億円)相当も5セント余り下げ、90セントを割り込んだ。DBSグループ・ホールディングスの永久債(同3.3%)も2.5セント安の90.4セントと、3年ぶりの下落幅となる方向だ。

  クレジットトレーダーによると、アジアの銀行のドル建てAT1債の価格は平均で1セント以上下げた。

Asia's Riskiest Bank Debt Tumbles After Credit Suisse News

  キャップストリーム・キャピタルのポートフォリオマネジャー、ポーリーン・クリスタル氏は「多くの投資家が銀行セクターへのエクスポージャーを減らしたいと考えるだろう。もっと脆弱(ぜいじゃく)な銘柄を売却できない場合には、今度は流動性がまだ残る次に脆弱な銘柄を売ることになろう。より低格付けの発行体など、比較的リスクの高い証券が一層売りを浴びやすい状況になるだろう」と指摘した。

BloomBerg

【コメント】
 週明けに懸念されていたクレディ・スイスの動向。UBS銀行により買収されることが決まり、破綻することは避けられた。クレディ・スイスの今日の株価は57.2%のも暴落。そして助けた側のUBSは一時16%の下落となった。

 そして、クレディ・スイスの一部の債権が無価値化することから、購入している企業に損失が発生するとして、記事にあるようにアジアの金融株も大幅な下落となった。この信用収縮は連鎖する。損失が出れば、それを抑えるために早めに売る。損失を穴埋めするために利益の出る金融商品を売る。ババ抜きゲームでは早く売りつけた方が生き残れる。とみんなが思い始めた。

 それでも筆者は、数か月は持ち返して小康状態となるのではないかと思っている。今後は当局による金融規制や損失を限定するための貸出の制限(いわゆる貸し渋りや貸しはがし)が始まる。次は不動産市場の崩壊となる。それは過去に日本でも起こったことであり、避けるすべはない。

 世界で実施されている利上げをもろに受けるのは債権である。金利が上がるとその分債券価格は下がる。それにより損失を出したのが、シリコンバレー銀行。そのあとの金融不安を受け、事前に拡大を防ごうとしてクレディ・スイスを救ったがその代償として、債券は無価値となった。

 債権の次は、金利上昇により借金が減ることで起こる現象が始まる。長期かつ大きな金額の借金が必要な不動産がやられる。そして、リスクの高いベンチャー投資が抑えられる。急激な信用収縮が世界を恐慌へと導く。

タイトルとURLをコピーしました