
報道記事:米国の弾薬余剰、近く枯渇か ウクライナ支援長期化で
【10月11日 AFP】米国は、ロシア軍の侵攻と戦うウクライナにとって不可欠な弾薬を供与しているが、生産ペースが消費に追いついていないことから、近く一部の弾薬を提供できなくなる見通しだ。
AFP
米国はウクライナに対する最大の武器供給国となっており、これまでに168億ドル(約2兆4500億円)以上の軍事支援を行ってきた。だが米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のマーク・キャンシアン(Mark Cancian)氏は最近の分析で、一部軍需品の備蓄量が「戦争計画や訓練に必要な最低レベルに到達しつつある」と指摘。侵攻前の水準まで補充するには数年かかるとの見方を示した。
匿名で取材に応じた米軍関係者は、大国が関わる戦争で必要な弾薬数について、米国がウクライナ紛争から「教訓を学んでいる」と説明。必要な弾薬数は予想より「はるかに多かった」と認めた。
米国では1990年代、ソ連崩壊を受けた国防費の削減により、国内の軍需企業が大幅な減産を余儀なくされ、その数は数十社から数社にまで激減した。だが米政府は今、軍需業界に増産を促し、2020年以降製造されていない携帯型対空ミサイル「スティンガー(Stinger)」などの生産を再開させる必要に迫られている。
■「代替手段がない」
米国がウクライナに供与した軍需品の中には、ウクライナ軍がロシア軍の首都キーウ進軍を阻止するために使用した対戦車ミサイル「ジャベリン(Javelin)」や、東部・南部で現在進めている反攻作戦で重要な役割を果たしている高機動ロケット砲システム「ハイマース(HIMARS)」など、ウクライナ戦争の象徴となっているものも含まれる。
ハイマースが使用する誘導型多連装ロケット発射システム(GMLRS)弾は80キロ以上離れた標的を正確に攻撃できるが、米国内の在庫は減少している。
米政府の武器調達官を務めていたキャンシアン氏は、米国がジャベリンとスティンガー同様にハイマース用ロケット弾の備蓄の3分の1をウクライナに供与した場合、その数は8000~1万発に相当すると説明。「これは数か月持つだろうが、在庫が尽きると代替手段がない」と指摘した。ハイマース用ロケット弾の生産ペースは年間5000発程度で、米政府は増産を目指して予算を割り当てているものの、それには「何年もかかる」という。
■ジャベリンやりゅう弾も枯渇か
米国はウクライナに約8500発のジャベリンミサイルを供与しているが、その生産ペースは年間約1000発にとどまる。米政府は5月、3億5000万ドル(約510億円)分を発注したが、備蓄の補充には数年かかるとみられる。
同国はまた、北大西洋条約機構(NATO)規格の155ミリりゅう弾を80万発以上ウクライナに供与している。米国防総省によると、この数は西側諸国からの供与分全体の4分の3に当たる。
キャンシアン氏は、米国の供与量は「おそらく自国の戦闘能力を損なうことなく提供できる限界に近い」との見解を示した。155ミリりゅう弾の米国内での生産能力は月間1万4000発だが、国防総省はこれを3年以内に3万6000発まで増やすと発表。しかしそれでも年間生産量は43万2000発となり、ここ7か月でウクライナに提供された数の半分に満たない。(c)AFP/Sylvie LANTEAUME
【コメント】
平時と戦時は状況が全く異なる。世界もっとも多く武器を持つアメリカが武器不足になろうとしているのだ。しかも、他国の戦争で武器を消耗している。高性能の武器があれば、戦争に勝てるようで実際にはそうではない。高性能の武器は数が少なくすぐ無くなってしまう。
最近の武器は互いに高性能なため、先に攻撃したほうが有利になる。ちまちま攻撃するより、最初に一気に相手を叩き潰す方がいいのだ。だがうまくいかなければすぐ弾薬不足となってしまう。
記事にあるように、ウクライナでの武器の消費はアメリカでの生産量の数倍のようだ。工場は簡単に増やせない。ウクライナもあと半年もすれば武器が尽きてしまう。そうなると、西側の武器の性能による優位性がなくなってしまう。これは、どこの国もわかっているはずである。大事なのは武器の備蓄とともに国内での生産能力だ。
ちなみに、ドイツは戦争を実施できる状況にない。武器弾薬を備蓄していないためである。なぜ、この状況を放置していたのかはわからない。日本もそれに近い。日本は攻撃されてもアメリカが支援に来るまで持てばよいという考えだが、そのアメリカが、武器不足になっているのだ。
武器不足のせいかわからないが、日米での合同訓練にハイマースが届いていない。供給がひっ迫している可能性もある。
SPTNIC 10月10日 戦争の場合、ドイツは2日分の砲弾しか持っていない=BI
テレ朝NEWS 10月7日 現場に弾が届かずハイマース訓練中止 日米演習で大失態
ドローンが脅威なのは大量生産ができてしまう点だ。自動車を毎年2000万台生産できる中国はドローンをどれだけ生産できるだろうか?台湾がアメリカから地対空ミサイルを大量に購入したところで、万単位にはならない。ドローンが1万機あれば中国は毎日100機ずつ100日間投入できる。全機撃ち落されても構わない。台湾の地対空ミサイルはすぐに尽きてしまうだろう。